残業代未払いで請求してきっちり取る方法
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残業代未払いで請求してきっちり取る方法
海外の英語の辞書には「KAROSHI」という言葉が掲載されているそうです。
スキヤキ、ニンジャ、オリガミなどと同じように「過労死」が英語圏でも通じてしまうのは日本人としてなんとも情けない話です。
海外では終業時間を過ぎても働いて残業をしていると、時間内に仕事も終わらせられない効率の悪い奴、というイメージだそうです。
「見ろよ、あいつ残業なんかしてるぜHAHAHA」って感じでしょうか。
日本人なら「遅くまでご苦労様。頑張ってるな!」と言われるところが未だに多いのが現状です。
世界に名だたる大企業のビルにも、深夜でも煌々と蛍光灯の明かりが見えています。「先輩が残業してるのに、お前は帰るのか!?努力が足りん!」などとのたまう上司も元気いっぱい毒を振りまいて活躍中です。法律の整備も進んではいますが、そんな老害上司はなかなか滅んではくれません。
上司より先に自分が倒れてしまわないように、残業についてしっかり認識をすることが必要です。そして未払いがあったら、きっちり会社に払わせましょう。その方法を紹介します。
残業代とは
「残業」とは、決められた労働時間を超えて働くことです。そして、「残業代」はその対価(給料)です。
この決められた労働時間のことを、「法定労働時間」と呼びます。法定労働時間とは、法律で決められている労働時間で、『1日8時間1週40時間』となっています。
労働基準法第32条に、
『使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間(特例措置対象事業場においては44時間)を超えて、労働させてはならない。』
と定められています。
(特例措置対象事業場とは、美容院、小売業、飲食店、映画・演劇業などで、常に店舗(事業場)で働いているのが10人未満というところが該当しますが、詳しくは各自治体の労働局HP等を参照してください。)
『1日8時間1週40時間』という決まりがあるから、月曜から金曜の5日間働いて土日休み、という企業が多いのです。
一方で、サービス業や小売業など、土日が稼ぎ時で店舗は休みがないといった仕事はシフト制であったり、月初は暇だから労働時間は短めで月末は忙しくて長く働く、という職場もあります。
そういう会社は「変形労働時間制」を採用しています。1週間や1ヶ月間の一定期間の間で、平均すると『1日8時間1週40時間』となるように働く、という制度です。
そして、この法定労働時間を超えて働くと、残業代がつくわけです。
残業代は、
・通常の労働時間の賃金(月給÷月の平均所定労働時間)×1.25以上
という計算で算出すると決められています。
休日労働だと35%、休日労働+深夜残業だと60%増し、など細かく決まっていますが、中小企業には適用されないこともあるので注意が必要です。
中には「みなし残業」や「名ばかり管理職」の設置、その他の特殊な労働契約を結んで、なんとか時間外労働を誤魔化そうとしている悪徳企業もあります。
自分の会社の就業規則をよく読み、気になることはきちんと確認しておきましょう。
労働者を守るために、36協定(サブロクきょうてい)という決まりもあります。
『労働者は法定労働時間(1日8時間1週40時間)を超えて労働させる場合や、休日労働をさせる場合には、あらかじめ労働組合と使用者で書面による協定を締結しなければならない』
と労働基準法第36条で定められているので、36協定と呼ばれています。
会社は従業員に残業させるなら、書面で協定を結んで、それを労働基準局に申告しなければなりません。
しかし、実際にきちんと協定を締結して、正しく申告している企業は約50%しかないという調査結果もあります。
これからの労働者は法律を知り、自分を守る術を身につける必要があります。
残業代未払いしている会社ってどのくらいあるの?
厚生労働省が企業の残業代未払いについて調査した結果が公表されています。「平成27年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果について」によると、
・是正企業:137企業
・支払われた割増賃金合計額:11億5602万円
・対象労働者数:1万1155人
・1企業当たり:844万円
・1人当たり:10万4000円
となっています。
平成27年4月~平成28年3月の1年間で、137の企業が残業代を未払いしていたため、労働局によって是正されたという結果です。
そのうち1社は3億円以上の割増賃金が未払いだったということで、かなり悪質です。
ただし、上記の調査結果は1企業で100万円以上の割増賃金(残業代)を支払っていなかった企業の統計なので、未払賃金100万円未満の企業は含まれません。
サービス残業が多くてもそれが慣例になっており、「これくらいの額で労働基準局に訴えるのも面倒だし、まぁ我慢するか~」と働いている労働者もかなりの人数がいると予想されます。
実際には中小企業含めて1000社以上の企業が多かれ少なかれ残業代を未払いしているのではないでしょうか。
残業代未払いをしっかり取り立てるためにはどうしたらいい?
残業代を支払ってもらう、というのは法律で定められた労働者の権利です。
ただし「2年間」という時効があります。
労働基準法115条に「賃金(退職金を除く)や災害補償その他の請求権は2年間」と定められているのです。
過去十数年に渡り未払賃金があるため、重い腰を上げてやっと未払いの請求をしよう、と決意しても、直近の2年間分しか請求することはできません。思い立ったが吉日ということで、未払賃金に気づいたら早めに請求することが大事です。
残業代未払いを取り立てるために必要なものが、4つあります。
①「雇用契約書・就業規則」
です。雇用契約書や就業規則には、労働時間や時間外労働についての規則や契約について記載されています。採用時にもらえるものですが、もし手元になければ人事部や担当者からもらいましょう。
②働いた時間を証明できるもの(タイムカードなど)
次に、実際に働いた時間を証明できる証拠が必要となります。タイムカードのほか、ビルやオフィスの入退館記録、会社でやり取りしたメールなど、「仕事をしていた時間」がわかるものはすべて押さえておきましょう。
シフト表、業務日報、パソコンのログデータなども証拠となります。そういったものがない場合は、毎日退勤時刻に個人のメールアドレスに業務用メールアドレスからメールを送るなど、証拠を作っておくとよいでしょう。
③残業時間中の業務内容がわかるもの
「勝手に残業して時間を伸ばしていた」「その時間会社でボーっとしていた、遊んでいた」などと会社から突っ込まれないために、残業指示書や残業中に送ったメールなどを証拠として押さえておきましょう。
また、上司が残業を認識していたとわかるような日報やメールなども証拠となります。
④給与明細
最後は、支払われた給料の明細書です。
実際に基本給がいくらで、残業代がいくら支払われているのか、というのがわかる証拠です。
もしも紛失してしまったら会社に請求することはできますが、再発行の義務はないため、最悪の場合もう手に入らないこともあります。絶対に無くさないようにしましょう。
残業計算をしてくれるソフトやアプリなども最近ではあるので、自分で試算をしてみて、やっぱり未払いがある!ということがわかったら、金額を確定し証拠とともに会社に未払い残業代の請求をしましょう。
会社側は「基本給に残業を組み込んでいる」などと反論することが多いです。
就業規則をよく読んで、基本給と手当などの規定がどうなっているのかを確認しましょう。
残業代が毎月固定されている契約だとしても、法定労働時間以上の労働には必ず定められた計算法によって算出された残業代がつきます。固定残業代との差額分を受け取ることが可能です。
残業代未払いを訴えても会社が払ってくれない時は労働基準局に頼るの?
個人で残業代の未払い請求をしても、取り合ってくれないというブラック企業もあるかもしれません。
そんな時は、労働基準監督署に申告をしましょう。
労基署は使用者である会社に対して、調査をして未払賃金があれば是正勧告を行います。厚生労働省のホームページに、詳しいサンプルや書式などがあるので、そちらを確認してください。
しかし、それは待てないという場合や、自分では難しいという時は弁護士に相談をしましょう。弁護士に依頼をすると、弁護士は、
①内容証明郵便を発送し
②タイムカードやICカードの記録などの資料開示請求をし、
③会社と交渉
という流れで仕事を行います。
内容証明は自分でも送ることができますが、弁護士に依頼すると確実です。多くの会社が任意の交渉の段階で、弁護士が算出して確定した未払い残業代を支払ってくれます。
しかし、それでも支払わないという超ブラック企業の場合は、
④労働審判か通常訴訟を起こし裁判
となります。訴訟や裁判など、個人で行うにはやはり限界があるので、最初は弁護士の無料相談などを利用して、どのように対応するのかを決めるのがよいでしょう。
残業代未払い請求は、労働者の権利です。証拠集めや手続きなど、時間もとられ、精神的にも大変です。
しかし、違法な労働をさせるブラック企業をこの世からなくすためにも、正々堂々と戦うことが必要なのです。
「忍耐は美徳」「苦労は買ってでもしろ」という言葉は、残業代未払いには通用しません。法律を味方につけて、会社に「NO!」を突きつけられる人間になりましょう。