【実録】給料未払いの相談すべき人・持参すべき必要書類・証拠を完全解説
目次
給料未払いの相談は誰にすべきなのか?必要な書類や証拠をまとめてみました。
労働の対価である給料。給料日にウキウキで銀行に行ってみると……あれ?給料が振り込まれてない? そんなゾッとする給料未払い。
単なる計算ミス、手続き上の不備ですぐに支払われるなら良いのですが、そうでないことも多々あります。
そんな時、一体どんな証拠を集めて、どんな手続きを行えばいいのでしょうか?
給料未払いはそもそも違法なの??
労働基準法の第24条には、給料支払の5原則、というものがあります。
1,通貨で支払う(現物支給はだめ)
2,労働者に直接支払う
3,全額支払う
4,毎月一回以上支払う
5,一定の期日に支払う
というものです。
給料未払いは、この労働基準法の5原則に違反することになります。つまり、労働基準法(24条)に違反する行為であり、30万円以下の罰金が科せられる犯罪となります。
「会社の経営が悪化している」「会社が倒産してしまった」「労働者が会社の備品を壊したのでその分と相殺して支払わない」「トラブルがあったから支払いたくない」「急に辞めたから給料は出せない」などなど、給料未払いにはさまざまな理由が存在します。
しかし、いかなる理由があろうとも、給料は絶対に払わなければなりません。
会社側も拒否することはできません。
トラブルや会社の機器の損害と相殺…というのは、会社が改めて労働者に損害賠償請求をすることなので、会社側が勝手に給料を差し引いて支払うことは認められていません。「全額支払う」のが原則なのです。
まるまる1ヶ月~数カ月分の月給が入金されないというだけでなく、時間外労働の割増分だけが支払われていないなどという一部だけの未払いであっても、違法です。
労働者には請求する権利があります。
では、給料未払いがある場合、どのような手続きを行えばよいのでしょうか?
給料未払いの相談は警察にすべきなの?誰にするのが一番いいの?弁護士?社労士?労基?警察?
給料が未払いになっているということが判明したら、まずは会社にその旨を伝えます。単なる手続き上のミスであれば、すぐに支払われますが、会社は「わかっていて」支払わない場合もあります。
「払って下さい」と口で伝えても、のらりくらりとかわされたり、メールも電話も無視されてしまう、ということもあるようです。
逆に「お前なんかに支払わない!」と怒鳴られたり、「もう少し待って」が何ヶ月も続いたり…という事例もあります。
言っても支払ってもらえない、という時は、文書で会社に通達をすると、「こいつ本気で未払い分を請求するつもりだな」と会社も気づきます。
内容証明はインターネット上にテンプレートもたくさんあるので、自分で送ることが可能です。自分では難しいという場合は、自分以外の誰かを挟んで、支払いを督促するという方法があります。
会社によっては従業員のことは舐めているが、役所や肩書のついた人が入ってきた途端にビビって支払う、ということもあります。
権威に弱いという人はどこにでもいるものです。そうした経緯を踏まえて、それでも支払ってくれない場合は少額訴訟や裁判、という流れになります。
では、給料が未払いとなっていて自分一人では解決できない場合、労働者は一体誰に相談して、督促をお願いしたらいいのでしょうか?
弁護士に相談する
弁護士は、法律のプロです。依頼人の代理として裁判を起こすことも可能で、会社との示談交渉など法律の専門知識を駆使して助けてくれる存在です。
正式な請求文書も書いてくれますし、いろいろな手続きについて教えてくれるので、安心して任せることができます。
不当解雇が絡んでいる事例や裁判を起こすしかない状況など、自分では解決が難しい場合には最初から弁護士に相談しておくと、その後の手続きがスムーズです。ただし、正式に依頼するとなるとそれなりに料金もかかります。
司法書士に相談する
司法書士は、140万円までの請求にかかる裁判なら、弁護士と同様に代理人として法廷に立つことができます。
未払賃金が140万円未満で、なおかつ裁判を起こす可能性が高いなら、司法書士に相談してみるのもよいでしょう。
社会保険労務士に相談する
社会保険労務士でも厚生労働大臣の認定を受けた「特定社会保険労務士」に相談するという方法もあります。
特定社会保険労務士は、裁判外紛争解決手続(ADR)の代理人として、依頼人の代理人として会社と給料未払いの交渉を行ってくれます。
裁判はできないので、話し合いで解決したいという人に向いています。
労働基準監督署に相談する
各都道府県に設置された厚生労働省の管轄機関である労働基準監督署(労基)では、電話と窓口で給料未払いの相談に乗ってくれます。会社にたいして是正勧告など行政指導を行ってくれます。あくまでも「指導」であって法的な強制力はありません。しかし、何度も支払督促や是正勧告を無視するといった悪質な経営者に対しては告発して検察庁に書類送検することもあります。
労働相談センターなどに相談する
全国労働組合総連合が全国に設置している「労働センター」でも電話や窓口、メールで相談することができます。
また、全国の労働局や労働基準監督署には「総合労働相談コーナー」も設置されています。
東京都には東京都産業労働局の出先機関として「労働相談情報センター」が設置されています。
労働問題について高度な法律解釈・判例紹介・訴訟手続きのノウハウなどについて教えてくれたり、「あっせん」といって労働者と会社の間に立って解決の手伝いをしてくれることもあります。
未払賃金に関しては民事事件となるため、基本的には警察では解決できません。
ただし、会社側の明確な詐欺罪の証拠や、横領や窃盗の事実、証拠があるならば、警察に相談するということも視野に入れておきましょう。
未払賃金の話をしたら殴られた、脅迫された、などということがあればすぐ警察に行ってください。
労働相談コーナーなどは全国にあり、無料相談を設けております。
下記にて確認してください。
・給料未払いの無料相談先窓口まとめ完全版【東京・大阪・名古屋・福岡】
相談する際に持参すべき証拠まとめ
弁護士、司法書士、社会保険労務士、労働基準監督署、労働相談センターなど第三者に給料未払いについて相談する場合、必要なものがあります。
①雇用契約書と就業規則
雇用契約書や就業規則には、労働時間や時間外労働についての規則や契約について記載されています。採用時にもらえるものですが、もし手元になければ人事部や担当者からもらいましょう。基本給や残業代、給料支払に関することなど明記されているものが必要になります。
②給与明細
給与明細も必要です。実際に基本給がいくらで、残業代がいくら支払われているのか、というのがわかる証拠です。
賃金の単価がわかれば、未払金の額も確定します。もしも紛失してしまったら会社に請求することはできますが、再発行の義務はないため、最悪の場合もう手に入らないこともあります。絶対に無くさないようにしましょう。
③給料未払いの証拠(タイムカードなど)
最も重要なのが、給料未払いの証拠です。給料未払いを証明する場合、実際に働いた時間を証明できる証拠が必要となります。
タイムカードのほか、ビルやオフィスの入退館記録、会社でやり取りしたメールなど、「仕事をしていた時間」がわかるものはすべて押さえておきましょう。
シフト表、業務日報、パソコンのログデータなども証拠となります。そういったものがない場合は、毎日退勤時刻に個人のメールアドレスに業務用メールアドレスからメールを送るなど、証拠を作っておくとよいでしょう。
手書きの日記であっても証拠として認められることもあるので、きちんと記録は残しておきましょう。
これらのものを用意しておけば、スムーズに相談に乗ってもらえる可能性が高くなります。
相給料未払いは最終的に未払いのままになることもあるの?
裁判になって会社側が負ければ、請求通り未払い給料は支払われます。
しかし、会社がすでに倒産してしまっていたら、未払い分がそのままになってしまう可能性もあります。そうした事態にある人の助けになるのが、「未払賃金立替払制度」です。
企業倒産により賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、未払賃金の一部を立替払する制度です。
未払賃金の額の8割を国が立て替え払いをしてくれます。ただし、受けることができる条件や上限額があるため、最寄りの労働基準監督署に相談をしてください。
適用されたとしても2割分は諦めるしかありません。また、給与未払いの証拠がきちんと揃っていなければ、会社が倒産していなくても裁判で負けてしまう可能性もあります。
給料未払いで泣き寝入りをしないためにも、きちんと働いた記録を残して、管理をしておくことが必要です。