日給制とは?月給制とは?起源や最低日給や最低月給など制度の内容を詳しく解説
日給とは?月給制とは?それぞれができた意味って何?
月に一度訪れる、アノ日。気分は上がったり、下がったり、もう大変。
そう……給料日です。
かつて大正時代のフリージャーナリスト、長谷川如是閑(はせがわにょぜかん)は言いました。「女子は月経に支配され、男子は月給に支配される」と。
今の時代、女子も男子も老いも若きも汗水たらして働いていますから、国民のほとんどが月給(給料)に支配されていると言っても過言ではありません。
給料の支払い方法には、会社や働き方によっていくつかの形式があります。
・時給制
・日給制
・月給制
・日給月給制
・年俸制
などが存在します。法律で給料の支払い方法は特に定められていないため、最低賃金や労働時間を守り、就業規則や労働契約書に明記しておけば支払い方はどれでもOKです。
時給制のアルバイトや日給制の職人さんや派遣社員でも、給料は月に一回決められた給料日にまとめて支払われる、という人が多いのではないでしょうか。
勘違いしている人も多いのですが、正社員は月給制と思いきや、実は「日給月給制」を採用している企業がほとんどだったりします。
そういった日給・月給制の違いや歴史について、ちょっと学んでみましょう。
日給とは?
日本では江戸時代より労働者の労働時間は、日の出、日没を基準にして、「七時出五時引」の10時間労働が基本となっていました。
職人たちは技能の優劣によって賃金額を定める等級別日給制がとられており、親方がその職人の働き具合や技量にしたがって決めていました。
「八さんはベテランだから4匁だな。熊は最近サボるから2匁だ」ってな具合です。ちなみに江戸時代、一般的な職人の給料は日給1.5匁~3匁、大工で5匁くらいもらう人もいたようです。今の価値にするとだいたい1匁1700円~3000円くらいなので、まぁだいたい新人で日給3、4000円、中堅どころで1万円弱、ベテランで1万5000円、というところでしょうか。今とそこまで変わらないですね。
江戸時代は金貸しや両替商はいましたが、お金を預かってくれる銀行はなかったので、ほとんどの町民はその日稼いだお金はその日にもらう日給制が基本でした。
「こちとら江戸っ子、宵越しの銭は持たねぇ!」
なんてセリフが時代劇でよく出てくるのは、貯金する機関がないということ、タンス預金は火事が起きたらパァになってしまうから意味がない、ということが江戸町民の生活の根本にあったためです。
明治以降、近代工業が発展してくると、次第に日の出や日没も無視した、理不尽な長時間労働が行われるようになりました。
そのうち仕事の質が低下するなどの問題が起きたため、出来高制や時給制度が導入されるようになっていきました。
現在では、労働時間にかかわらず(ただし原則1日8時間以内)、1日の賃金が決まっている仕事を「日給制」としています。給料は働いた日数分の給料がまとめて月に1度支払われることもあれば、俗に言う「日雇い」としてその日にもらえるという仕事もあります。
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月給とは?
日給制が職人たちの仕事から発生したのに対して、月給制は武士の給与システムから生まれました。
江戸時代、武士は「禄高制」により、給料は「米」で支払われていました。毎年2月と5月に四分の一ずつ、そして10月に残りの二分の一の米が支給され、必要な現金は米を交換することで得ていました。
下級武士は年3回の禄米だけでは生活がままならず、魚釣りや傘張りのアルバイトなどをして日銭を稼いでいた人もいたといいます。
明治時代に入ると、官吏、銀行、財閥会社などの職員は武士の禄高制を引き継いだ形の年俸制や月給制が取られ、給料は米から現金での支給に代わりました。
そして銀行が身近になり、労働環境が整えられ税制や社会保障制度が出来るにつれ、職工の給料も毎日渡すよりまとめて渡した方が計算も楽だしいいよね、ということで、次第に月給制を取るところが増えていったようです。
現在では多くの企業が正社員には「月給制」もしくは「日給月給制」を採用しています。
「月給制」とは、月額賃金が完全に固定されており、遅刻や早退にかかわらずその金額が毎月支払われる、というシステムです。はっきり言って会社は損をする可能性もあるので、完全な月給制を採用している会社は少ないといいます。
「日給月給制」とは、月額賃金は固定されていますが、欠勤や遅刻・早退は給料から控除される仕組みです。現在、多くの企業はこの形式を採用しています。「日給をまとめてもらうのと何が違うのか」というと、働く日数によって左右はされないのが「日給月給制」です。「日給制」はその月に何日働いたかで給料が変動しますが、「日給月給制」では2月は28日までしかないから、31日までの月よりも給料が少ない、ということはありません。
日給には最低額はあるの?
国は労働者の「最低賃金」を定めています。これは地域の物価指数などによって決まるため、各都道府県によって金額が違います。最低賃金は時給が基本となっています。
最低賃金の金額が一番低いのは高知県・鳥取県・宮崎県・沖縄県で693円、一番高い東京都で907円(平成28年)となっています。
日給制の場合、最低賃金の算出方法は、
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
となります。
例えば、基本給が日給8000円、1日8時間勤務した場合、
8000円÷8時間=1000円となり、全国の最低賃金を超えていることになります。
ややこしいのが、基本給が日給5000円、1日8時間勤務、職務手当が毎月25000円、年間労働日数250日などという場合です。
5000円÷8時間=625円(時給)となり、一見最低賃金以下に見えますが、月給の職務手当がつくためそれも計算に入れることになります。
(25000円×12か月)÷(250日×8時間)=150円(時給)となり、
625+150=775円となるため、県によっては最低賃金を超えており合法となります。
ただし、現物給与としての食事の供与等がなされているときは、最低賃金額を下回っているかどうかは、食事代等を含めて判断されることになります。
また、「特定(産業別)最低賃金」が適用される場合は、そちらの最低賃金が適用されます。都道府県によって適用対象になる労働者が定められているので、詳しく知りたい場合は都道府県労働局または労働基準監督署に問い合わせてください。
月給には最低額は定められているの?
月給の最低額も、時間給で算出した都道府県別の最低賃金が適用されます。
月給÷1ヶ月の平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
という計算で算出します。
例えば、月給18万円で、1日平均8時間、1ヶ月25日間働いているとすると、
18万円÷(8時間×25日)=900円(時給)となります。
東京都ならアウトですが、千葉県(最低賃金817円)ならセーフとなります。
ただし、通勤手当、時間外手当は最低賃金の対象とはならないので、除外して計算します。
もし月給18万円のうち2万円が通勤手当や時間外手当であったら、
16万円÷(8時間×25日)=800円(時給)となり、千葉県でもアウトです。
日給の仕事は有給休暇って存在するの?
有給休暇(年次有給休暇)は、すべての労働者に与えられた権利です。
正社員であってもパートやアルバイトであっても、有給休暇を使う権利があります。
月給制でも、時給制や日給制であっても関係ありません。
労働基準法39条は「使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」と規定しています。
つまり、半年間勤務して8割以上出勤した労働者に対しては、次の1年間に10日の有給休暇を与えるというものです。
そして、その次の1年間も8割以上出勤したら、順次付与日数が増えていきます。最終的に6年6ヶ月以上経過した時点で、20日の有給休暇が与えられます。
ただし、パートやアルバイトの場合、フルタイムの労働者に比べれば労働時間や日数が少ないことから、それに応じて得られる有給休暇も少なくなります。
例えば、週に3日だけ働いているなら6ヶ月後に発生する有給休暇は5日間です。
しかし、「日雇い労働者」として毎日違う雇い主のところで働いている場合、継続して同じところで働く、という条件を満たしていないかもしれません。雇用主との契約も重要となるので、働く際は契約書をよく確認しておきましょう。